実際には、生物のいろいろな性質(「表現型」といいます)は、DNAだけで決まっているのではなく、環境と生物との相互作用の中で決定され、それが細胞分裂や世代を超えて維持されるのです。「生まれ」という基板が、「育ち」によって影響を受けながら、やがて固定的な表現型を生み出すと考えるのが、現在の生物学の常識となっています。エピジェネティクスは、そのような環境要因がDNAの使われ方にどう影響するか、ということを扱う学問なのです。(『エピゲノムと生命 DNAだけでない「遺伝」のしくみ』太田邦史)