だが突然、私は読書のことを考えた。読書がもたらしてくれるあの微妙・繊細な幸福のことを。それで充分だった、歳月を経ても鈍ることのない喜び、あの洗練された、罰せざる悪徳、エゴイストで清澄な、しかも永続するあの陶酔があれば、それで充分だった。(『罰せられざる悪徳・読書』ヴァレリー・ラルボー、岩崎力訳)