多くの臨床体験から、(マリー・ド・)エヌゼルさんは、患者が最期の瞬間にとても「死と親密になる」ことを発見する。抵抗も拒否もしないで死を受け入れる瞬間がくる。すると人はそばに付き添う人に自分自身のいちばん大切なことを伝えようとする。しぐさで、ひと言の言葉で、ときには視線で、自分が真実だと思うことをいおうとするのだ。そのとき、「死は人間を無限に、奥深さに至らせる」と彼女はいう。(『生の時・死の時』共同通信社編)