「だからフィードラーを殺すというの?――それであなた、悩むことはないの?」
「これはきみ、戦争だよ」リーマスはこたえた。「小規模の、至近距離での戦闘だから、不愉快な局面がいっそう痛切に感じられるだけだ。ときにはそれが、罪のない人間の命を奪う場合もある。だが、そんなこと、問題にもならん。ほかの戦争にくらべてみるさ。たいした問題でないのは、だれにだってわかるはずだ――このまえと、このつぎにおこる戦争を考えてみるがいい」
(『寒い国から帰ってきたスパイジョン・ル・カレ:宇野利泰訳)