つまり、私たちが日常使っている紙幣というかたちのおカネには、どうもそのまま持っていたのでは価値蓄蔵の手段として適切ではない、という深刻な欠陥があるようです。貨幣経済の歴史を振り返ると、紙幣には一般的に「伸びも縮みもせず」いつ使っても同じ尺度でありつづけるという大事な役割を果たせない傾向がはっきりと出ています。とくに、何らかの価値を保持しつづける資産との結びつきがいっさいなくなってしまった不換(ふかん)紙幣には、この傾向が顕著です。(『危機と金(ゴールド)』増田悦佐)