精神とは同一のものをきらうものであります。列車に乗って外の景色をながめております場合、いつまでもいつまでも同じような荒野が広がっている場合には、精神はたいくつします。また、一つの論文がただ長いだけで、内容的には同じことがくり返されてくる場合には、精神はそのような論文を読み続けることを拒否するのであります。それはことばを換えて申しますと、精神は単調、モノトニー、ということをきらうものであるということであります。あるいは精神は反復をきらうと言ってよいかもわかりません。精神は常に変化を求めるものであります。たとえば、一つのオーケストラを聞く場合、同じメロディーや、同じリズムがくり返されることにはたえられず、新しい旋律のあらわれるのを常に期待するものであります。
 要するに、精神というものは、すでにあるもの、すでにつくられたもの、すでに自分の所有するものには満足しないのであります。精神は常に変化を求めるもの、常に新たなるものにあこがれるものであります。しかも単に新しいもの、変わったものを求めるだけではなく、〈より〉よいものを求めるものであります。〈より〉よいもの、〈より〉美しいもの、〈より〉正しいものを求めるもの、それが人間の精神であります。
 なお、精神は新しいものを求めますとともに、調和を求めるものであります。変化を求めると申しましても、ただ雑然と多くのものがあるということを精神は喜びません。ましてものごとが対立し、矛盾したままで存在することには満足しません。満足しないだけではなく、そのような対立や闘争にはしんぼうができず、すべてのものに平和と調和を求めるものであります。このようにして精神とは、同一なるもの、無変化なるもの、不調和なるものに満足しないだけではなく、さらにみずから進んでその新しいもの、〈より〉よいもの、〈より〉調和あるものをみずからつくるものであります。精神によって、新たなるもの、〈より〉よいものは生み出されるのであります。精神こそ創造の原理であり、時間と歴史の源泉なのであります。
(『「自分で考える」ということ澤瀉久敬〈おもだか・ひさゆき〉)
「おまえたち、だと?」私が言った。「おれたち? おれは、おれとおまえのことについて話してるんだ。おれたちやおまえたちについて話そうとしているんじゃない」(『レイチェル・ウォレスを捜せロバート・B・パーカー:菊池光訳)
 老いの意味とは何だろうか。進歩主義という宗教の中に入っていると、老いも死もあたかも存在しないかに見えた。高度経済成長の時代、人々は進歩を求めて都会でがむしゃらに働いた。ある日突然、田舎に残してきた親が倒れ、この世代は初めて老いの問題に直面した。そして今、自分たちの老いを迎えるに至った。高度成長を支えた世代を襲った自らのアイデンティティを突き崩すショックが二つあった。一つはオイルショック。もう一つが「老いる」ショックである。(『老人介護 じいさん・ばあさんの愛しかた三好春樹

介護
 オムツにしない工夫こそが介護なのである。オムツに出た便を処理するのは、介護ではなく“後始末”にすぎない。(『老人介護 常識の誤り三好春樹
 ロック界の現状は、スプーンを曲げる程度の超能力で乗り切れるほど、クリーンなものではない。ロックで売れるためには、彼(超能力少年の清田君)は、スプーンなんかよりも、まず自分の信念を曲げるところから出発しなければならない。ロックはパワーを伝えたりはしない。パーがワーと騒ぐだけだ。(『安全太郎の夜小田嶋隆
 そこに電気を流して神経を活発化させるとものすごく気持ちいい場所、というのがある。
 それを知ったネズミは、自分でレバーを押して電流を流せるようになるから、自分の快感をコントロールできる。そうすると、もう水も飲まない、餌も食べない、ずっとレバーを押し続ける。気持ちいいんだろうね。それで結果的にどうなるか? レバーを押し続けて死んじゃうんだ。そのくらい快感に感じる場所があるというのは驚きでしょ。それで、その場所を〈報酬系〉と呼ぶようになったんだ。
(『進化しすぎた脳 中高生と語る「大脳生理学」の最前線池谷裕二

脳科学
 情報、調査・分析の世界に長期従事すると独特の歪みがでてくる。これが一種の文化になり、この分野のプロであるということは、表面上の職業が外交官であろうが、ジャーナリストであろうが、学者であろうが、プロの間では臭いでわかる。そして国際情報の世界では認知された者たちでフリーメーソンのような世界が形成されている。
 この世界には、利害が対立する者たちの間にも不思議な助け合いの習慣が存在する。問題は情報屋が自分の歪みに気付いているかどうかである。私自身も自分の姿が完全には見えていない。しかし、自分の職業的歪みには気付いているので、それが自分の眼を曇らせないようにする訓練をしてきた。具体的には常に複眼思考をすることである。
(『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて佐藤優

フリーメイソン