それはまさしく奇跡だ。
 脳のどこか、あるいは体のどこかで、心的または肉体的な刺激――“グラスを持ち上げたい”“指を火傷しそうだから鍋を下ろさなくては”――が発生する。その刺激は神経インパルスを生み、インパルスは神経細胞(ニューロン)からニューロンへと手渡されて全身に伝達される。インパルスは、人々の多くが考えているのとは違い、電流そのものではない。ニューロンの表面の電荷がほんの一瞬だけ正から負に変わるときに生まれる波だ。インパルスの強さはつねに一定で――存在するかしないかのいずれかしかない――時速およそ400キロという驚異的なスピードを持つ。
(『12番目のカードジェフリー・ディーヴァー:池田真紀子訳)
 私たちは自分の流儀で愛し、愛を売買できるものにしてしまうのです。私たちは商売根性に駆られているのですが、愛は売買、ギブアンドテイクの対象ではないのです。それはその中で人間のすべての問題が解決される、そういう存在のありようです。私たちはちっぽけな盃を持って井戸に行き、わずかな水しか手に入れないので、人生はちっぽけで取るに足らない安ぴかなものになるのです。
(『しなやかに生きるために―若い女性への手紙J・クリシュナムルティ:大野純一訳)
 これに対してもう一つ、「芯の柔らかい」利他主義 soft-core altruism と呼ぶべきものがあり、こちらは本質的には利己的な行為である。この場合、「利他的行為者」は、社会が、彼自身あるいはそのごく近縁な親族に、お返しをしてくれることを期待しているからである。彼の善行は損得計算に基づいており、この計算は、しばしば完全に意識的な形で実行されている。彼は、うんざりする程複雑な、各種の社会的拘束や社会的要請をうまく活用しながら、あの手この手を行使するのである。
(『人間の本性についてエドワード・O・ウィルソン岸由二訳)
 鋼鉄なしに安自動車は作れないだろう――そして社会不安なしには悲劇は作れないのだ。(『すばらしい新世界』オルダス・ハックスリー:松村達雄訳)

オルダス・ハクスリーディストピア
「まったくそのとおりだ。人はみな多かれ少なかれ、盗人であり詐欺師だ」(『名残り火 てのひらの闇II藤原伊織
 どんな体験でも体験者を少しは変えずにはおかない。とるに足りない体験はとるに足りないくらいに、小さな体験は小さく、大きな体験は大きくその人を変える。(『宇宙からの帰還立花隆