ここで明らかにしておきたいのは、共産主義資本主義も、崩壊の引き金となるのは「極端な集中」だということだ。(『2010年資本主義大爆裂! 緊急!近未来10の予測ラビ・バトラ:ペマ・ギャルポ、藤原直哉訳)
 それはまさしく奇跡だ。
 脳のどこか、あるいは体のどこかで、心的または肉体的な刺激――“グラスを持ち上げたい”“指を火傷しそうだから鍋を下ろさなくては”――が発生する。その刺激は神経インパルスを生み、インパルスは神経細胞(ニューロン)からニューロンへと手渡されて全身に伝達される。インパルスは、人々の多くが考えているのとは違い、電流そのものではない。ニューロンの表面の電荷がほんの一瞬だけ正から負に変わるときに生まれる波だ。インパルスの強さはつねに一定で――存在するかしないかのいずれかしかない――時速およそ400キロという驚異的なスピードを持つ。
(『12番目のカードジェフリー・ディーヴァー:池田真紀子訳)
 私たちは自分の流儀で愛し、愛を売買できるものにしてしまうのです。私たちは商売根性に駆られているのですが、愛は売買、ギブアンドテイクの対象ではないのです。それはその中で人間のすべての問題が解決される、そういう存在のありようです。私たちはちっぽけな盃を持って井戸に行き、わずかな水しか手に入れないので、人生はちっぽけで取るに足らない安ぴかなものになるのです。
(『しなやかに生きるために―若い女性への手紙J・クリシュナムルティ:大野純一訳)
 これに対してもう一つ、「芯の柔らかい」利他主義 soft-core altruism と呼ぶべきものがあり、こちらは本質的には利己的な行為である。この場合、「利他的行為者」は、社会が、彼自身あるいはそのごく近縁な親族に、お返しをしてくれることを期待しているからである。彼の善行は損得計算に基づいており、この計算は、しばしば完全に意識的な形で実行されている。彼は、うんざりする程複雑な、各種の社会的拘束や社会的要請をうまく活用しながら、あの手この手を行使するのである。
(『人間の本性についてエドワード・O・ウィルソン岸由二訳)
 鋼鉄なしに安自動車は作れないだろう――そして社会不安なしには悲劇は作れないのだ。(『すばらしい新世界』オルダス・ハックスリー:松村達雄訳)

オルダス・ハクスリーディストピア
「まったくそのとおりだ。人はみな多かれ少なかれ、盗人であり詐欺師だ」(『名残り火 てのひらの闇II藤原伊織
 どんな体験でも体験者を少しは変えずにはおかない。とるに足りない体験はとるに足りないくらいに、小さな体験は小さく、大きな体験は大きくその人を変える。(『宇宙からの帰還立花隆
 人間の生がとりうる最も矛盾した形態は「慢心しきったお坊ちゃん」という形である。(『大衆の反逆』オルテガ・イ ガセット)
「人生ということばが、切実なことばとして感受されるようになって思い知ったことは、瞬間でもない、永劫でもない、過去でもない、一日がひとの人生をきざむもっとも大切な時の単位だ、ということだった」
(『一日の終わりの詩集』長田弘)
 基本的に新聞には、誰かが「アナウンスしてほしい情報」だけが載っている。
 新聞やテレビで公開された情報は、誰か声の大きな人間が、世間を自らの望む方向に誘導するために流している情報だと考えるべきなのだ。
(『僕は君たちに武器を配りたい』瀧本哲史)
 一つの現象は他と通い合う。暗喩はそこに生まれる。
(『シリーズ自句自解I ベスト100 池田澄子』池田澄子)
 では事件の本質とは何か。それは警察組織そのものと関連している。単なる警察官の非行問題ではすまされないのではないか。国政の場で審議するなら、中曽根内閣には3人の警察官出身者が閣僚にいる。後藤田官房長官は警察庁長官、秦野法務大臣は警視総監、山本自治大臣は大阪府警本部長。警察OBが国政にたずさわることが悪いとはいえない。だが政治的中立を標榜しつづける警察官が、辞めると同時に旗色を鮮明にし、政治の中央に座る。その結果、必然的に警察は政治腐敗にアンタッチャブルにならざるを得ない。
(『警官汚職読売新聞大阪社会部
 ペンフィールドが1930年代に行なった古典的な脳の実験は、ある有名な謎の元になった。その後ずっと哲学の学徒からは「水槽の脳」と呼ばれている問題である。こんな話だ。「あなたはそこに座ってこの本を読んでいると思っている。実はあなたは、どこかの実験室で体から切り離され、培養液の入った水槽に入れられた脳だけの存在かもしれない。その脳に電極がつながれ、あやしげな科学者(マッド・サイエンティスト)が電気刺激を流し込み、それでまさにこの本を読んでいるという体験を引き起こしているのだ」
(『パラドックス大全ウィリアム・ストーン:松浦俊介訳)
 わが国の二大政党制において最もよくある票割れの例は、スポイラー(有力候補の票を食う候補者)効果である。有力候補二人の接線の場合、トップを走る二人のうち片方から、第三党の「スポイラー」候補が票を奪ってしまうことで、競争相手の勝利が決まることがある。たとえば2000年の大統領選挙でこれは起こった。フロリダ州で、アル・ゴアジョージ・W・ブッシュの均衡を緑の党のラルフ・ネーダーが崩し、それによって勝敗が決まったのである。票割れは、選挙のプロセス全体をミスガイドする見えざる手だ。その結果、選挙民の意思の反映が弱められ、民主的プロセスへの信頼が失われ、金銭が浪費され、そして時には生命さえもが浪費される。
(『選挙のパラドクス なぜあの人が選ばれるのか?』ウィリアム・パウンドストーン)
 流人史を調べていくと、しばしば「無宿」とか「非人(ひにん)」というコトバに出会う。だが、ここでは、世間からのけものにされた存在だから、犯罪に走りやすいのだ、とは思わないでほしい。農民や漁民や町人が犯罪者になったとき、あるいは、犯罪者に仕立てられたとき、結果的に無宿とか非人にされることが多いのだ。とくに、宗教犯の場合、そういう傾向が強かった。
 江戸時代、徳川幕府は、人民はかならずどこかの寺に所属しなければならないという寺請制度を創設して人民支配を実行した。寺院はその先兵として戸籍を作成して人民を管理した。その戸籍簿がいわゆる宗旨人別帳である。この人別帳から除籍された人を「非人」とか「無宿」というのである。
(『大石寺の「罪と罰」』玉井禮一郎)
(六)まっかに焼いた鍋を日親の頭の上にかぶせた。髪は燃え肉も焼けただれたが、大きな苦悩もなく、しばらくの後本復した。(七)将軍が獄吏(ごくり)に命じて日親の舌を抜かせようとした。ところが獄吏はこれを憐れんで舌頭を少し切り取った。(『反骨の導師 日親・日奥』寺尾英智、北村行遠)
 できないことが、訓練によってできるようになって満足するというのは、確かに素晴らしいのですが、“できないまま”でも満足に生活できるようにしていくことが、プロとしてもっと大切なことではないでしょうか。(『失語症者、言語聴覚士になる ことばを失った人は何を求めているのか』平澤哲哉)
 アインシュタインは、光の束にまたがって時計を振り返ってみたり、急降下するエレベーターのなかに立ってコインを落としている自分の姿を思い浮かべて、新しい概念に到達したという。(『言語を生みだす本能』スティーブン・ピンカー:椋田直子訳)
 会議は(ハリー・デクスター・)ホワイト(米財務長官首席補佐官)とそのスタッフが牛耳った。詰めの交渉で突然、それまで論議されたこともない項目を協定の中に盛り込み、他国の代表を驚かせたりした。
 結局、IMF協定と国際復興開発銀行(世界銀行)協定を含めたブレトンウッズ協定が採択された。ホワイトの構想を基本にケインズ案の特色を加味した内容となった。まさにこれが、戦後の国際的な通貨・金融体制の出発点となった。ホワイトを「IMFの父」と呼んでもよいかもしれない。
 そのホワイトが実はソ連のスパイだったのである。
(『秘密のファイル CIAの対日工作』春名幹男)
「見る」とはどういうことだろうか? 私たちは真っ暗闇では何も見ることができない。つまり、ものを「見る」ということは、その物体から出た「光」を目でとらえているということだ。(『脳のしくみ ここまで解明された最新の脳科学ニュートン別冊

脳科学
 しかし、存続が目的であるとすれば、もっとも成功した社会とは、もっとも変化しなかった社会、彼らの伝統とアイデンティティとを保持してきた社会、または、環境の搾取を合理的に制限することで、存続をはかってきた社会なのだ。これまでもっとも長く続いてきた社会、変化の恐れにうまく抗してきた社会とは、今でも狩猟採集生活をしている社会である。南アフリカのクン・サン、またはブッシュマンと呼ばれる人々、オーストラリアの先住民、森の奥深く、めったに出会わない人々などだ。(『人間の境界はどこにあるのだろう?フェリペ・フェルナンデス=アルメスト長谷川眞理子訳)
 大体、善だといわれている事柄自体が社会的判断である以上、その時々の権力者側から与えられたものであり、ある事柄を善と思うこと自体が洗脳されている結果だと考えるべきだろう。北朝鮮や戦前の日本がいい例だ。(『洗脳護身術 日常からの覚醒、二十一世紀のサトリ修行と自己解放苫米地英人
 フランスの数学者アンドレ・ヴェイユ――ゲーデルと同様、餓死を選んだ特異な思想家シモーヌ・ヴェイユの実兄――が、不完全性定理に関連して、こう述べたと伝えられています。
「神は存在する。なぜなら、算術は無矛盾であるからだ。
 悪魔は存在する。なぜなら、われわれは算術の無矛盾性を証明できないから」。
(『ゲーデル・不完全性定理 "理性の限界"の発見吉永良正

数学
「フィンランドのウォッカはとびきりうまい」と聞かされていたが、うわさにたがわぬものだった。150年たっても小枝ほどにしか育たない極北の木がゆっくりと、激しく燃え続けて、強烈な酒をつくり出すのだそうだ。(『深代惇郎エッセイ集深代惇郎
 鹿内さんは私に言ったことがありました。「美術館を持っているということは、大したことです」。世界中どこへ行っても、すべて「開け、ゴマ」なのだそうです。「ロックフェラーの本宅へ行った日本人はあまりいないと思うけど、私は呼ばれる」。本当に、周囲に何もないところに、一族が固まって住んでいるんだそうです。そこには美術館からなにから、すべて揃っている。そういうところに、日本人は普通呼ばれない。ロックフェラーは同格の人間しか呼ばないのです。
 そのレベルの交際がないと、情報戦に負けます。(渡部昇一)
孫子 勝つために何をすべきか谷沢永一渡部昇一

孫子
 40歳すぎた夫婦が15歳や16歳の息子ひとりにふりまわされていることは、たとえその暴力がどんなにひどかろうと、親が傷つけられようと、同情すべきことがらではない。そうせざるを得ない子供の方がよほど同情に値するし、40歳が困っているのならば、16歳の方はもっと困っているであろうと想像するからである。(警視庁少年相談室副主査・江幡玲子)『子供たちの復讐本多勝一
 世界にはたった3種類の領域しかありません。私の領域、あなたの領域、そして神の領域です。私にとって、神という言葉は「現実」を意味します。現実こそが世界を支配しているという意味で、神なのです。私やあなた、みんながコントロールできないもの、それが神の領域です。
 ストレスの多くは、頭の中で自分自身の領域から離れたときに生じます。「(あなたは)就職した方がいい、幸せになってほしい、時間通りに来るべきだ、もっと自己管理する必要がある」と考えるとき、私はあなたの領域に入り込んでいます。一方で、地震や洪水、戦争、死について危惧していれば、神の領域に入っていることになります。私が頭の中で、あなたや神の領域に干渉していると、自分自身から離れてしまうことになります。
(『ザ・ワーク 人生を変える4つの質問バイロン・ケイティ、スティーヴン・ミッチェル:ティム・マクリーン、高岡よし子監訳、神田房枝訳)
 自分のことを「ダメ人間」と思っている人は決してダメ人間ではないのです。どうしてかというと、ダメである自分を外側から観察しているもう一人の自分がいるからです。もしほんとうのダメ人間ならば、自分がダメであるということに気づきません。(『インテリジェンス人生相談 社会編佐藤優