ここで初めの問いに戻ると、人間が他の生物に比べて相対的な「最大寿命」が長いということの意味が、以上のことから明らかになる。それは、人間の場合、生殖を終えた後の「後生殖期」が長い、ということである。つまり、純粋に生物学的に見ると“不要”とも言えるような、子孫を残し生殖機能を終えた後の時代が構造的に長い、という点に、「ヒト」という生き物のひとつの大きな特徴がある。(『死生観を問いなおす広井良典