君たちは或る人の生活を、また或る人の死を、とやかく言い、何か格別の功績のために偉大とされる人物の名前に向かって、あたかも見知らぬ人に出会って吠えかかる小犬のように吠えかかる。君たちにとっては、誰もが善き人と思われないほうが好都合だからであって、あたかも、他人の美徳が君たち全体の過失を叱ってでもいるかのように思えるのだ。君たちは嫉妬しながら、他人の輝かしさを自分の汚なさに比べるが、そんなことをあえて行なうことが、どんなに君たちの損になるかも分からない。ところが、もし徳を求める者たちが貪欲で好色で野心家であるというならば、徳という名を聞くだけで嫌気を覚える君たちは、一体全体何者だというのか。(「幸福な人生について」)『人生の短さについて 他二篇セネカ茂手木元蔵