ルクレティウス(※紀元前99年頃-紀元前55年)は次のように提唱した。宇宙は、宇宙空間を不規則に動きまわる無数の原子で構成されており、それらが日光の中に漂うほこりのように、衝突し、つながりあい、複雑な構造を形作り、またばらばらになり、創造と破壊のプロセスを絶え間なくくりかえしている。このプロセスから逃れる道はない。夜空を見上げ、わけもなく感動し、無数の星々に驚嘆するとき、見えているのは、神の創造物でもなければ、われわれの仮の世から切り離された透明球体でもない。そこに見えているのは、人間がその一部をなす物質界、人間を構成するのと同じ元素からなる物質界である。神の基本計画も、造物主も、知性ある設計者も存在しない。われわれが属する種を含め、万物は、茫漠たる歳月を経て進化してきたのだ。進化は一定ではない。ただし生物の場合、自然選択の原理を伴う。すなわち、生存と繁殖に適した種が、少なくとも一定の期間は、存続するのだ。適していない種は短期間で滅びる。だが、われわれの種も、われわれが生きる惑星も、毎日輝く太陽も、どれも永遠に続くものではない。ただ原子のみが不滅である。(『物の本質について』)『一四一七年、その一冊がすべてを変えた』スティーヴン・グリーンブラット