古代ギリシアから今日に到るまで、多くの人々によって唱えられてきた死をめぐる箴言(しんげん)がある。“人は自分の死を体験できない。体験できるのは他者の死だけである”。この箴言が妥当視されてきたからこそ、古代の宗教祭典において人々は動物や時には人間の惨殺を凝視することで自身の死を疑似的に体験し、中世社会では「メメント・モリ(死を想え)」が時代的な標語となった。(『死は共鳴する 脳死・臓器移植の深みへ』小松美彦)